半島を出よ<上・下>
幻冬舎
村上龍
上下巻、1000ページにわたる渾身の書き下ろし。
まずはその「分厚さ」に軽く圧倒されつつ、ページをめくると登場人物。
「げっ!200人以上いるんじゃないの?これ。」ちょっと気後れする。
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧してしまう。おいおい、そんなのあり得るのかよ!とバカにしてはいけない。読んでると、おいちょっと待て!これってあり得るんじゃない?と思わず引きずり込まれる。そして、「あり得るんじゃない?」と思った瞬間から、逆に読み込むのが「恐怖」にすら変わる。そうなのだ、必要以上の「創造力」は時に「恐怖」すら呼び起こす。
考えなくていいこと。考えるのが怖いこと。に自分は蓋をして生きているのかも?
あえて見ないようにしているんじゃないのか?
そんな自虐な思考にも陥ってしまう。
村上龍自身の取材による圧倒的な情報量が物語に壮大なスケールと現実感を与えている。が、その反面、「いちいち」説明が「くどい」と思われることもしばしば。。。描写もリアルで目を背けたくなるようなシーンも多い。
どこか視線がクールだが、終盤にかけてはかなり熱いぞ。
また、「希望の国のエクソダス」、「恋愛の格差」でも感じられたことなんだけど、
村上龍の視点にグッと考え込まされる一節。ここだけ採録しておきたい。
~ 国が考えているのは大多数の国民のことで、わたしのことではない。
つい一週間前まで、大多数の国民の側に属していたから、それがよくわかった。
状況の変化によっては、誰でもある日突然に多数派から少数者へと立場が
移ってしまう可能性があるということだ。~
後半、めちゃめちゃおもしろかったですよ。