さらさらさらさら、サクサクサクサクと読みきってしまった。
ちょっぴり不思議な読後感。
やっぱり好きなんだろうな、この人の作風が。あらためて思うよ。
ちょっぴり不思議だが、「奇譚」というほど、摩訶不思議なスト-リ-じゃない。
けっこう現実的。とか思ってしまった。むしろいつもの小説のほうが摩訶不思議です。え~ありえないでしょ!ってこと多いからね。
4つ目のスト-リ-「日々移動する腎臓のかたちをした石」は個人的によかった。主人公の小説家、淳平が出会った年上のキリエ。彼女の台詞はよかったな。
「——-略—— そして何よりもバランスがよくとれている。実を言うと、私は何はさておきバランスということがまず気になるの。音楽にしても、小説にしても、絵にしてもね。そしてバランスがうまくとれていない作品や演奏に出会うと—–つまりあまり質の良くない未完成なものに出会うとということだけど——とても気持ちが悪くなるの。乗り物酔いしたみたいに。私がコンサ-トに行かないのも、小説をほとんど読まないのも、たぶんそのせいね」
う~ん、なんか分かるな~この感じ。と思いつつ、数センテンス後に
淳平がこう切り返す。
「かなり極端な意見みたいに僕には思える。」
この感じ、めちゃめちゃお洒落だな。
バランスを重要視してる本人がバランス悪い。みたいなね。
現実的には、バランスの悪いものばかりの中で、つまりバランスの悪いものに
出会うリスクに常にさらされながら、調整して生活してるんだよね。
このくだりはかなりお洒落だな~なんて、しみじみするオリハシ。
さらに「あ~こういう時あったな」って台詞。
また、キリエの台詞なんだけどね。
「誰かと日常的に深い関係を結ぶということが、私にはできないの。
あなたとだけじゃなく、誰とも」と彼女は言った。「私は今自分がやっていることに完全に集中したいの。もし誰かと日常生活をともにしたり、その相手に感情的に深くのめり込んだりしたら、それができなくなってしまうかもしれない。だから今みたいなままがいい」
ま、いわゆるゆる~い関係ってやつですね。
これ、男の台詞だったらかなり嫌な奴、って感じなんだけど。
20代後半のころってこう思ってたことあったな。とくにNakool をやってから。
(あ~いやな奴ですね~!)
やっぱり究極的に大変だったし。
でも、今は違いますよ。ほんと。
決して経営が楽になった。とかそういうんじゃなくてね。(今だって超綱渡り状態ですから)
単純に落ち着いたとか、大人になった。とかそういうレベルの話でもなく、
—–もちろん,昔みたいに「ガァ---」っと感情的にハマッていくってこともなく—-
もろもろ引っくるめて、やるっきゃないでしょ!みたいな「勢い」はあるかな。
僕の好きな言葉に「姿勢」ってあるけど。(姿に勢いがあるっていいでしょ?)
けっこう、根本のところで「勢い」って大事なんだよな。ね?O氏。
話は関係ないけど、
村上さんの物語に出てくる人のファッションってみんな綿素材とか、
麻とか、シルクとか、天然素材で。
ベ-ジュのコットンパンツとか、混、ネイビ-が主流のような気がする。
もうちょっと、凝った人がいてもいいのにね。
バランスが悪いのかな?