社会人になっての初めての給料。
もう10年も前の話になるが思い出さずにはいられない味がある。
10年前、初給料でご馳走しようと思い立ち、親父と母を連れて新丸子にある焼き鳥やさん「鳥武」にいった。(弟のHideaki君は当時、千葉は勝浦に暮らしていたので連れてってません。)
初給料なんだから焼き鳥なんて。。。とお思いのかたもおられるだろう。
だが当時、親父は「鳥武」さんの大ファンであった。
ここの特徴は、
お通しが白いお皿にのったタマネギとキャベツということ。
焼き鳥に山葵をつけて食べるということ。
そして、「はんちゃん」と呼ばれる半生なレバ-が絶品であること。
最後は釜飯で〆るということ。
まだ中学・高校ころは、親父が飲みに行って帰りが遅いときは
「今日は焼き鳥のおみあげがあるかな?」と心待ちにしていたものだ。
案の定、酔って帰ってくる親父の右手には、鳥武さんの焼き鳥が。
砂肝、手羽先、若み、手羽唐揚げ。。。と質素な包みにくるまれて。。。
その包みを見るとオリハシの唾液分泌量は倍に増加したモノだ。(深夜12時頃)
そう、もちろん発砲スチロ-ルの皿脇には山葵が添えられているのだった。
だからオリハシにとって焼き鳥に山葵は別段珍しいことではないのだ。
むしろ「七味唐辛子をかける」ということに「え?!そうなの?」という違和感を覚えたほどだ。
何の話だ?おちつけ!オリハシ!鳥武さんの話じゃない。
その同じ味に出会ったのだった。
再会である。
その店の「おとうさん」と呼ばれる大将は、鳥武さんの今は亡きマスタ-と同じところで修業をしていたそうだ。いや、同じところで修業していたからって同じ味とは限らないぞっとご指摘があるかもしれないが、やっぱりあの脇に添えられた主張している山葵を見ると思い出さずにいられないのだ。
僕の遺伝子に組み込まれた焼き鳥の味なのだ。
そのお店は、上丸子山王町にある。
武蔵小杉から徒歩10分、向河原から5.6分と言ったところだろうか?
そうだ、玉川中学校の当時野球部顧問、藤沢朋二朗先生が近くに住んでいた。
そうだ、ヤンマ-の元実家の近くだ。(個人的な話ですまない。)
「鳥しま」というお店です。
この近所に住むKato君にも幼き頃よりこの焼き鳥の味の遺伝子が—-やはりお父さんの影響らしいが—–しっかりと組み込まれている。山葵が珍しくないのだ。
鳥どうふ 柚子の香りと共にあたたまる一杯。
(これは初めて食べました。)
惚れ惚れする串たち、
そして唐揚げ
—唐揚げにも山葵—
かかせません。
そして、〆はやっぱり釜飯。
15人ほどで満席になるカウンターを一人で切り盛りする「おとうさん」と呼ばれる大将、
その笑顔はとても、とてもチャ-ミングなのだ。近所の人、地元のお客に愛され続けてるとても幸せそうな御顔であるのだ。その表情はかわいらしい鳥すら想像させる。
ふと、気づくと満席のすべてのお客さんがいい笑顔で杯をあけ、そして大将の作品に舌鼓を打つ。
いいお店だ。
山葵が目に沁みたのか。
思わず涙腺がゆるむ。