「洋服たちがみんな幸せそうに見える」
ナクールを見た感想で一番嬉しかった誉め言葉です。
(まだ、仮店舗だったころの話ですけどね。)
こういう言語感覚ってオリハシは好きです。
なかなか言えないよなぁ。。。こういう気の利いた科白。
で、実はこの小説にも出てくるんですよ。その気の利いたフレーズがね。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」著:村上春樹
「世界の終り」、「ハードボイルドワンダーランド」の異なる二つの物語が、偶数章、奇数章でそれぞれに同時並行的に進行し、後半になるにつれ次第に螺旋状に絡まり合っていく、これぞ村上春樹のパラレルワールド。
で、ストーリーとは直接関係ないから書いてしまいます。下巻、「ハードボイルドワンダーランド」の主人公「私」が図書館に勤める彼女を待つ間、金物店で爪切りを買うんです。¥2800-の。
「私」が店に入ると中年の店主はドライバーで小型の電気泡立て器を丹念に分解しています。その作業を中断して「私」を接客するんです。
その最後の描写がとてもオリハシ好みです。
私は二千八百円払ってその爪切りを買った。—略—私に釣り銭を渡すと、彼はまた泡立て器の分解をはじめた。たくさんのねじがサイズに会わせてそれぞれの白いきれいな皿に区分されていた。皿の上に並んだ黒いねじはみんな幸せそうに見えた。
—略— どうして皿の上のねじがあんなに幸せそうに見えたのだろうと考えてみた。あるいはそれはねじが泡立て器の一部であることをやめてねじとしての独立性を取り戻したからかもしれない。あるいはそれは白い皿というねじにとっては破格ともいえる立派な場所を与えられたからかもしれない。いずれにせよ何かが幸せそうに見えるというのはなかなか気持ちの良いものだった。
思わず考えさせられます。
ここのセンテンスはいろんな意味で深いです。少なくとも商売人オリハシはそう深読みしてしまいます。
ものいわぬものがものをいう瞬間ってやっぱり有るんだと思う。
読み出したら止まりませんよ、これ。
もちろん意味不明な内容もたくさん出てきます(笑)。。。非現実的でそれが嫌だ。という人がいるかもしれませんが、それでもオススメですね。
深く読むと勝手にリアリティが立ち上がってきてグイグイ引き込まれちゃいます。