伊坂幸太郎が好きでたまに読むんだけどね。
先週読んだ「死神の精度」になんと泣けちゃったんだよね。自分でも新鮮だった。
これ、死神の千葉さんが出てくる短編なんだけど、4編目の「恋愛で死神」、そして6編目「死神対老女」で泣けちゃった。
あんまりここで書いちゃうとネタバレになっちゃうからアレだけど、オリハシがどんなところで感動するのか知りたい人は是非、一読おすすめです!4.6.だけじゃなく通読したほうが面白いです。
「誤りと嘘に大した違いはない。微妙な嘘というのは、ほとんど誤りに近い」
このフレーズが洋服の販売においてどんな風に使われるのか?このあたりがポイントです。(ここでは「お互いの幸せのために・・・」というフレーズが思い浮かんだんだけどね)
そう、6編目であの「科白」が出てきたときはさ、「あのジャケットが!」ってもう泣けちゃうわけよと。
ちなみに伊坂作でたびたび話題に上がってくるのがさ、「人は外見で判断するのだ」っていうテーマ。
今回も自分の外見をごまかすためにわざとダサくみせるためのメガネをかける荻原君がね、出てくるんですよ。ハイブランド系の販売員として。
オリハシもね、小さな頃から洋服に親しんできたし、街の洋服屋の倅として「外見で人を判断するのはなるべくやめたいよな」って思うわけ。先代である父がオリハシに残した言葉のひとつを言おうか?ちょっと笑っちゃうけど「綺麗な薔薇には刺がある」なんだよね。たしか高校生くらいの時に言われたね(笑)
ちょっと余談。
ちなみにナクール先代が残したオリハシにとってインパクトを与えた3大フレーズ
「お互いの幸せのために・・・」
「綺麗な薔薇には刺がある」
「勇気ある撤退も必要だ」
皆さん、それぞれに考えを巡らせてみてくださいな。
話をもどすと、
「棘がある」と、だけども、そうは言っても外見で判断しちゃうでしょっていうことから逃れられない。逆に外見を上手く利用する技も自分で携えていたりするわけ。
そういう視点を伊坂幸太郎は別の作品でも言ってる。
「合コンはまず第一印象が勝負なんだよ。人間の評価は最初の二秒で決まるって知ってるだろ?」
「買ったばかりの新品丸出しってのは格好悪い。けどな、垢抜けていないのはもっとまずい。これは俺の持論なんだけどさ、洋服で外見を格好良く見せることは難しいけれど、格好悪くすることはいくらでもできるんだ。」(『砂漠』 伊坂幸太郎)
まったくそのとおり。
「人の外見は、ファッションの銘柄と同じだ」と春はよく言う。「ブランド品は高いけれど、その分、品質が良い。その逆もある。とんでもない品物にブランド名をくっつけて客を騙すこともできる。人の外見も一緒でさ、人は目に見えるもので簡単に騙される。一番大事なものは目に見えない、という基本を忘れているんだ」
あの盲目のサックス奏者は、目に見えるものを軽々と超越していた。春に後で聞いたところ、ローランドカークは鼻でフルートを演奏するらしい。楽器を何本も一度に口に入れて、吹く。
「見た目の不格好さだとか、奇を衒うだとか、そういうのは飛び越えてるんだよ。音が良ければ、見た目は関係がない。当たり前のことだよ。本当に大切なことを知っている人が俺は好きなんだ」春が言った台詞には、私も同感だった。「見かけで物事を信じるのは大事なことではあるけれど、恥ずかしいことでもある」とも彼はよく言った。(『重力ピエロ』伊坂幸太郎)
そう、そうなんだけど、それはそうかもしれないけど。
ファッションする楽しさ、服装を選ぶときの高揚感はやっぱり特別なんだよな。
服を丁寧に選べなくなったらおしまいだ!「こんなもんでいいや」とか適当に選んでたら人生の損失だぞ。
服を着るときの気迫!それをファッションと呼ぶのだ。その1枚は時空を越えて人を幸せにする可能性があるのだから。
そう思わせてくれるのが「死神の精度」だ。
あ、ちなみに「死神の浮力」もよかったぜ。