木曜日のオリハシです。
このインタビュー本、予想以上におもしろかったです。
インタビュアー、川上未映子の村上春樹への質問っぷりが本当に良かった。彼女のファンになりそう。
「彼女はこれまで僕が会ったどのインタビュアーとも違う種類の質問を、正面からまっすぐぶつけてきた。そして自分の納得がいくまで、臆することなくいろんな角度から質問を反復した」と村上春樹もあとがきって書いてる。
で、この中でね、
信用取引と時間を味方につけることについて村上春樹さんが答えてるんだけど、そこはなかなか商売人オリハシとして共感しちゃう部分なんだ。
どうして読者がついてきてくれるのか?と
それは
「これは中身がよく見えなくて、モワモワしてて変なものですけど、実は一生懸命時間をかけて、丹精込めて僕が書いたものです。決して変なものではありませんから、どうかこのまま受け取ってください」って僕が言ったら、「はい、わかりました」と受け取ってくれる人が世の中にある程度の数いて、もちろん「なんじゃこら」といって放り出す人もいるだろうけど、そうじゃない人たちもある程度いる。そうやって小説が成立しているわけです。それはもう信用取引以外の何ものでもない。つまるところ、小説家にとって必要なのは、そういう「お願いします」「わかりました」の信頼関係なんですよ。この人は悪いことしないだろう、変なこともしないだろう、そういう信頼する心があればこそ、本も買ってくれる。「どや、悪いようにせんかったやろ?」と関西弁でいうとちょっと生々しくなるけど(笑)。(134p)
そう言ってるんです。これはもうそのまま、オリハシが考えてる理想の商売人像と同じです。
服、モノ自体を作ってる訳じゃないけど、その人のコーディネート組むこと、全体をスタイリングすることはほとんど協働的物作り感覚です。今、ナクールを贔屓にしてくれる人たち(あえてナクーリストとは言いません)のことを必死に考えて、思い浮かべてセレクトしてます。もちろんお店を構成する上で見せ方として必要なセレクトだってありますが、名前さえわからない通行人のことだってイメージしちゃうんです。
受け取ってくれる人がある程度いるっていうのがね、やっぱりポイント。ここはもう毎回どきどきしちゃうよね。今日、昨日会って急に信用してくれて!って言ってもね。ははは、何をおっしゃいますか!って話じゃないですか。初めこそ1枚1枚丁寧に販売したいんです。
ここではじめて時間っていうものがモノを言うんだと。そう思いませんか?
村上春樹はこう言います
「その信用取引を成立させていくためには、こっちもできるだけ時間と手間をかけて、丁寧に作品を作っていかなくちゃいけない。読者というのは、集合的にはちゃんと見抜くんです。これはちゃんと手間をかけて書いているものだとか、これはそうでもないとか。手を抜いて書かれたものは、長い時間の中ではほとんど必ず消えていきます。僕らは時間を味方につけなくちゃいけないし、そのためには時間を尊重し、大事にしなくちゃいけない。」(136p)
法政通りのような路面の、街の商店街でナクールのようなショップを続けていくのは「手抜き」では絶対に続きません。本当に真剣勝負です。先代も、もちろんオリハシも文字通り「身銭を切って」45年間続けています。
一昨日の20日でナクールは決算だったわけですが、手書きのオリハシノートを1年分、何度も見返してます。そしてみんなの顔を思い浮かべてます。ナクールでいい時間を過ごせただろうか?と。
今期も皆さんの信用を勝ちとるように努力しようと。そしてこれからも時代の風雪に耐えて未来を切り開くぞ、と。