昨日、先行でFBに投稿しましたが、本来こっち用に作った文章です。
小さなお店の小さな物語。どうぞ。
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直感が働く。
あぁ、このアロハシャツは僕が仕入れて、送りだしたものだ。
お顔も、そうそう、覚えてます、覚えてますよ、あなたのことを!!!
「お久しぶり・・・ですよね?」
そんなふうに切り込む。
「そうなんですよ!分かってくれて嬉しいです!!このシャツもナクールさんで・・・」笑顔で自分の着てるシャツを引っ張る。
「そうですよね!わかりますよ!」(そう、だって僕が仕入れたレインスプーンナーだから!)
ようこそ、おかえり!!シャツにもそう言ってやりたい。君は僕がまだ26、7歳のときに仕入れたものだよ。実に18年ぶりだな。
大切に着てもらって味が出てるなー、良かったなー愛されてて。
旧店舗時代、仮店舗時代にかけて足繁く通ってもらっていたお客様、そうです、ナクーリスト。
「この新店舗になって1度、来てもらいましたよね」
「そうです、そうです!、たぶん10年ぶりかと、あまりに久々過ぎて店の前を通り過ぎちゃいました。すみませんっ」
あは。
「ここ、リニューアルオープンしたが2006年10月なんですよ!まさに10年!」
「引越したんですけど、郵便物の転送期間が過ぎてしまって、DMが届かなくなったから来なきゃ!!」と横浜から来てくれた彼。今年、40歳になるという。(そうは見えないけど^^;)
それでも20代のころのシャツを着れるのがナクールの買い物だ。
大変貌を遂げた武蔵小杉話に花が咲き、お互い結婚したことを報告しあう。
ちょうどオリハシのスタイリング写真を撮影するために店に出てたa妻を紹介する。
買い物を終え、真新しいナクバックを持つ彼の後ろ姿を二人で見送る。
見送ったあと妻は言った。
「感動しちゃった」
僕よりも服のセンスのいい人はたくさんいると思うし、何よりセンスの善し悪しって好みの問題だったりする。もちろん、お洒落については自分も一生勉強だよなって考えてはいるが、僕よりもお洒落に造詣が深い人は現実としてたくさんいる。
僕よりもイマドキの洗練されたビジネスをしてる人なんかたくさんいるし、僕よりも大きくワイドに活動して、商売上手な人もたくさんいるだろう。そしてウチよりも何千枚も多くDMを送るお店はたくさんあるだろう。
でも、その1枚のDMが直接受け手の胸に刺さる確立はどうだろうか?
自分の仕入れた服と、それを手渡した人に僕のように向き合い続ける人はそんなには多くないはずだ。
出会った顧客一人一人と服を通して喜びを分かち合いたい一心で店頭にのぞんでいる。それがあってこそ買い物という行為が楽しく、豊かな物になると信じているから。そのために僕は丁寧に粘り強くタフに生きる必要があるのだ。
妻の言葉に涙腺が決壊しそうなのをグッとこらえる夏。